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トリルええよ

【ポケモン剣盾】ポケットモンスターの「トリプルアクセル」を大会で実施したらどうなるのか

お久しぶりです。論者大学です。

 

冬ですね(春)。冬と言えばフィギュアスケートだと思います。フィギュアスケートと言えば、ポケットモンスターソード・シールドにおいて登場した新技、「トリプルアクセル」をご存じですか?

 

タイプ    こおり    分類    物理
威力    20    命中率    90
効果    1ターンに3回連続で攻撃する。攻撃が当たる度に威力が20ずつ増える。
ポケモン徹底攻略様より引用)

これです。実質威力120(厳密には違うけど)の非常に強力な氷技ですが、命中90に泣かされることも多いわざですね。

このトリプルアクセルトリプルアクセルとか言っておきながら何をどうみてもトリプルアクセルではないです。別にいいけど。それでは、この「トリプルアクセル」を実際にジャンプエレメントとして実施した場合の判定・点数はどのようになるのでしょうか?気になったので深夜に調べてみました。日中だとしょうもないことするモチベって出ないですからね。

 

にわかなのでスケオタ各位におかれましては間違ってたら怒らずにそっと教えてください。

 

アクセルジャンプとは

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コストルナヤ選手の美しい3A踏み切り

まず始めにアクセルジャンプAxel jumpの定義を確認します。なお、アクセルジャンプは正式にはアクセルパウルゼンジャンプAxel Paulsen jumpと表記されますが本記事ではアクセルジャンプと呼称します。

アクセルジャンプでは左足のフォアアウトエッジで滑走した後左足で踏み切り、右足を振り上げて跳び上がります。着氷は右足です。(以上全て反時計回りのジャンプを行う選手の場合)

 

ポケモントリプルアクセル

では、ポケモントリプルアクセルを見てみましょう。 

youtu.be

両足フラットエッジで踏み切り両足で着氷していますね。意味わからん。現在のフィギュアスケートにおいてこのような踏み切りを行うジャンプはありません。

ということで結論は、「そもそも死んでもジャンプエレメントとして認めてもらえない」でした!今後のルール改正に期待ですね!

 

 

さすがにしょうもないので、これがアクセルジャンプとして認定される前提で検証します。アマージョによる「トリプルアクセル」の実施を見ると、1回転程度のジャンプを3回連続で行っていることが分かります。

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後半になるにつれてジャンプが高くなっていることから、ポケットモンスターの異常に高いジャンプ能力がうかがえます。

f:id:duscmawile:20220409013711p:plain←コンビネーションの後半のほうが高い選手

 

それはそれとして、この連続ジャンプはどのように判定されるでしょうか。フィギュアスケートの連続ジャンプには、「ジャンプコンビネーションjump combination」と「ジャンプシークエンスjump sequence」があります。定義を見てみましょう。

 

Jump Combinations
In a jump combination the landing foot of a jump is the take-off foot of the
next jump. One full revolution on the ice between the jumps (free foot can
touch the ice, but no weight transfer) keeps the element in the frame of
the definition of a jump combination.
Jump Sequences
A jump sequence consists of two jumps of any number of revolutions,
beginning with any listed jump, immediately followed by an Axel type jump
with a direct step from the landing curve of the first jump to the take-off
curve of the Axel jump.
(以上2つはISUによるTECHNICAL PANEL HANDBOOKから引用)

一般的には、トゥループやループ(約1名はフリップ)をセカンドジャンプとする連続ジャンプはジャンプコンビネーション、アクセルをセカンドジャンプとする連続ジャンプはジャンプシークエンスと覚えておけば大体良いです。

与えられる基礎点については、

ジャンプコンビネーション:含まれるジャンプの基礎点の合計

ジャンプシークエンス:含まれるジャンプの基礎点の合計×0.8

となります。

これを見ると、ポケットモンスターの「トリプルアクセル」は「シングルアクセルが3回連続するジャンプシークエンス」として扱われるように思えます。ちなみに3つのジャンプを含むジャンプシークエンスはフリーでしか認められないので、ポケモン対戦はフリースケーティングの規定が適用されるのでしょう。

引用したルールの前半で述べられているように、ジャンプコンビネーションにおいてはフリーレッグ(着氷したほうとは逆の足)に体重がかかってしまうとジャンプコンビネーションとしてみなされず、ジャンプシークエンスとして扱われたりもします。ただしこれはもとからジャンプシークエンスを意図した連続ジャンプには適用されないため、アマージョのようながっつり両足着氷でもこれは普通にシークエンスとしてみなされます(あってるよね?)。

 

以下はクソ複雑な例外についての話です。不正確かもしれません。

上記ルールの特例というか特殊処理として、「転倒またはステップアウトした直後にジャンプを跳んだ場合」があります。具体的には以下のルール。

Executions of jump not counted in Jumps combination or sequence
If in a jump combination or sequence a skater falls or steps out of a jump and
immediately executes another jump(s), the jump(s) after the mistake are not counted,
and the call will be the executed jump(s) before the mistake + sequence + the executed
jump(s). The jumps after the mistake are marked with an *.
2A(hop)+2A Call: 2A+Seq+2A*
2A+1Eu (fall/step out) +3S Call: 2A+1Eu+Seq+3S*
By doing this all the executed jumps will be visible on the computer screen and it will
be easy to follow the requirements of the repetition rule.
The Judges GOE refer to the entire element performed.
(ISUによるTECHNICAL PANEL HANDBOOKから引用)

例外の例(は?)として、北京オリンピックにおけるカミラ・ワリエワ選手のフリースケーティングプロトコルを挙げます。

 

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(XXIV Olympics Winter Games 2022のリザルトページから引用)

いろいろ書いてありますが、#3に書いてあるジャンプエレメントを見てください。

4T+SEQ+3S<<*と書いてあります。SEQがシークエンス扱い、*は無効な要素、<<は重度の回転不足を表します(最後は今は無視していいです)。

このジャンプではファーストジャンプの4Tの着氷が大きく乱れ、ステップアウトしました。ワリエワ選手はステップアウト動作をシングルオイラーに見立て、サードジャンプのつもりで3Sを付けました(4T+1Eu+3Sを意図)。ちなみにこのような着氷の乱れから無理くりサードジャンプを付けることはそこそこ良く見られます。ですがこれが認められず、ステップアウトした4Tの後3Sを跳んだ扱いになったため、上のルールに従ってシークエンスとして認定されたあげく3Sがキックアウト(無効扱い)されました。そんな感じ。たぶん・・・。

 

・回転の判定

次に回転について検証します。

Landed on the quarter

A jump will be considered as “quarter” if it is missing rotation of a ¼. This jump will
be indicated by the Technical Panel to the Judges and in the protocols with a “q”
symbol after the element code.

Under-rotated jumps

A jump will be considered as “Under-rotated” if it has missing rotation of more than
a ¼ but less than ½ revolution. An under-rotated jump will be indicated by the
Technical Panel to the Judges and in the protocols with a “<” symbol after the
element code. Jumps identified as under-rotated will receive reduced base values which are listed in the designated row of the SOV.

Downgraded jumps

A jump will be considered as “Downgraded” if it has “missing rotation of ½revolutions or more”. A downgraded jump will be indicated by the Technical Panel tothe Judges and in the protocols with a “<<” symbol after the element code. A jump identified as downgraded will be evaluated using the scale of values (SOV chart) for the element of one rotation less (i.e. a downgraded triple will be evaluated with the scale of values for the corresponding double). 

(ISUによるTECHNICAL PANEL HANDBOOKから引用)

これは簡単ですね。知ってる人も多いのでは。

1/4ちょうどの回転不足:クォーター(q)基礎点そのまま、GOE(出来栄え点)で減点

1/4より多く1/2未満の回転不足:アンダーローテーション(<)基礎点0.8掛け、GOEで減点

1/2以上の回転不足:ダウングレード(<<)回転数が一つ下のジャンプの基礎点を適用、GOEで減点

 

スローで回転をチェックしましょう。

www.youtube.com

アマージョの後ろ髪めっちゃ邪魔だな・・・)

全てのジャンプで正確に1回転しているように見えますので、1/2回転不足のダウングレード判定が適当でしょう。どう見ても空中で回転をほどいているように見えますが、そんな余裕ならもっと回せよ。

 

以上を踏まえると、

ポケットモンスターの「トリプルアクセル」は

1A<<+1A<<+1A<<+SEQ

が適当な判定ということになります。ダウングレードが付くうえ全て両足着氷のため、GOEは最低評価の「-5」となります。点数最低効率RTAでもやってんのか?

 

ここで1A(シングルアクセル)のダウングレードっていったい何だよと思われると思います。0回転アクセル、即ち半回転ジャンプワルツジャンプwaltz jumpといい、基本的に大会では無効なエレメントとなります。

しかし、もちろん初心者(バッジテスト初級)の出場するような大会ではワルツジャンプの実施が認められており、点数がもらえます。いくら調べても基礎点が出てこなかったのでハゲてしまったのですが、一番簡単なシングルジャンプ(1T)が0.4点なので0.2点とかじゃないですかね(適当)

大会出場経験あるとかで知ってる方は是非教えてください

 

ちなみに1級(初級の次)ではワルツジャンプの実施は認められていないものの、ワルツジャンプを実施してしまっても点数はあるらしいです。よくわからん、誤植か?

(以上は東京都スケート連盟フィギュア強化部「初級、1級、2級におけるISUジャッジングシステム・ウェルバランスについて」を参考にしました)

 

以上を総合しますと、ポケットモンスターの「トリプルアクセル」の基礎点は「ワルツジャンプの基礎点×3×0.8」となります!

 

 

 

 

 

 

 

 

Q6「1Aがダウングレードであった場合に、点数はどうなりますか?」

A6「1Aのダウングレードは、ノーバリューのジャンプとなり点数はありません。初級においては、ワルツジャンプを認
めておりますが、1Aのダウングレードはワルツジャンプにならず、点数が入りません。」

(東京都スケート連盟フィギュア強化部「初級、1級、2級におけるISUジャッジングシステム・ウェルバランスについて」より引用)

 

0点じゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

 

お疲れ様でした。

 

 

坂本花織選手世界選手権金メダルおめでとう

 

※4/10追記

ワルツジャンプの基礎点が一応分かりました!!

program.skatecanada.ca

こちらはSkate Canada(カナダのスケート協会)が出しているSOV(scale of values、得点表)をDLできるページになります(2021/4/10閲覧)。これによると、

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ワルツジャンプの基礎点は0.3になっていますね!左から二番目のカラムにSTAR/Adult onlyと書いてある通り、日本と同じく一部のクラス(初心者が出場するクラス)でしか得点は認められていないようです。

ちなみに調べてみたところ、STARはSkate Canadaが独自に定めるフィギュアスケートの技能検定みたいなやつで、日本でいうバッジテストみたいなやつでした。

info.skatecanada.ca

また、リンクは切れていましたがスロベニアのスケート協会が出した書類でワルツジャンプの基礎点が0.3となっていることを確認しましたので、ある程度国際的に通用するスコアリングであると思われます(n=2でこんなこと言うと怒られそう)。

ちなみにISUが出しているほうのSOV↓

https://isu.org/inside-isu/isu-communications/communications/21210-2253-s-p-sov-2019-20/file

にはワルツジャンプの項目はありません。ワルツジャンプの実施が認められるようなクラスっていうのは基本的に国際大会が無いため(あったらごめん)、国際ルールを定める意味が無いってことなんですかね。

 

 

 

https://www.cpastl.ca/sites/files/sov_table_singles_170614.pdf

ちなみにこちらはSkata Canadaが2017年に出しているジャンプの基礎点表ですが、"Additional STARSkate/Adult SOV elements"の項に以下のように書いてあります。

f:id:duscmawile:20220410184217p:plain

GOEが±3になっていることからも分かる通り、これは旧採点(2017-2018シーズンまで適用されたやつ)での数値になります。これを見る限り、カナダでのワルツジャンプの基礎点は旧採点時代から0.3となっているようです。

 

まあ1A<<がワルツジャンプの点もらえないらしいんで全然関係ないですね()